「”フェリチン”が高いから鉄は十分!」と聞いたことがあるかもしれませんが、それ、実はちょっと待って!
“フェリチン”が高くても、必ずしも「鉄が十分」というわけではないんです。
ここにはカラダの巧妙な「鉄を隠す作戦」が隠れているんです。
さぁ、その秘密を解き明かしてみましょう!
炎症が引き起こす「鉄を隠す作戦」とは?
炎症が起きると、カラダはウイルスや細菌が“鉄”をエサにして増えるのを防ぐために、「鉄を使わせない作戦」 を発動します。
そのとき肝臓で大量に作られるのが フェリチン(鉄の貯蔵庫) です。
「鉄」を”フェリチン”として隠すことで、血液の中にある「鉄」は減り、細菌が増えにくくなります。
“フェリチン”が高いからといって、”鉄”が隠されてしまっている状態では、カラダの中で上手に活用できていない可能性があるんです!
フェリチンを作るために 亜鉛が大量に必要
“フェリチン”を合成するとき、肝臓は大量の「亜鉛」を使います。
すると、 「亜鉛」が肝臓に引きこまれて、血液中の”亜鉛”が一時的に減ります。(=亜鉛シフト)
これが「炎症のときに、亜鉛が減る」と言われる理由です。
“鉄”が十分にカラダの中で働くためには、”亜鉛”もちゃんと働いてくれる必要があるんです。
“炎症”によって”亜鉛”が減少することで、”鉄”の動きが鈍くなってしまうので、「亜鉛のバランス」を保つことも大切なんです。
亜鉛が減ると、こんなトラブルが出やすくなる
亜鉛は「皮膚・味覚・免疫・ホルモン・神経」に深く関わる栄養素です。
- ❌ 皮膚トラブル(湿疹・皮膚炎)
→ 皮膚の修復に亜鉛が必要(コラーゲン合成、細胞増殖) - ❌ 味覚の低下
→ 味覚細胞の入れ替え(ターンオーバー)に亜鉛が必要 - ❌ 免疫機能の低下
→ 免疫細胞が正常に働くために亜鉛が必須
つまり…
炎症が起こる
↓
フェリチンを増やす(鉄を隠す)
↓
そのために亜鉛を肝臓に集める
↓
血中亜鉛が減る
↓
“皮膚”や”味覚”や”免疫”が弱る
という流れです。
フェリチン高値が「炎症によるもの」か判断するための検査項目
「フェリチンが高い=必ずしも鉄が多い」ではなく、”炎症のせい”で”フェリチン”が上がっているだけのことはよくあります。
その“炎症フェリチン”かどうかを見極めるために参考にできる「血液検査項目」を紹介していきます。
① CRP(C反応性タンパク)
- もっとも分かりやすい炎症マーカー。
- 0.1mg/dL 以上で、何かしらの炎症反応が起きている可能性。
- フェリチン高値+CRP高 → 炎症性フェリチンの可能性大。
② 白血球数(WBC)
- 炎症・感染で上昇しやすい。
- 好中球(NEUT)増加があると、急性の炎症の可能性が高まる。
③ 血沈(ESR/赤沈)
- ゆっくり上昇する炎症マーカー。
- 慢性的な炎症があると高くなる。
④ AST・ALT・γ-GTP・ALP(肝臓系)
炎症や肝機能低下でもフェリチンは上がるため、肝臓の状態を確認すると原因が分かりやすい。
- 肝臓はフェリチンを作る場所=炎症でフェリチンを増産する。
⑤ 亜鉛(Zinc)と銅(Copper)
炎症があると…
➡亜鉛が下がる(亜鉛シフト)
肝臓に引きこまれるため。
➡ 銅(特にセルロプラスミン)が上がりやすい
銅も炎症時に増える。
フェリチン↑ + 亜鉛↓ + 銅↑
= 炎症パターン
⑥ フェリチン以外の鉄指標(炎症で狂う)
炎症があると鉄代謝が歪むため必須チェック。
- 血清鉄(低くなる)
- TIBC(低くなる)
- UIBC(低くなる)
- トランスフェリン(低くなる)
- ヘプシジン(高くなる)←炎症で強く上昇
フェリチン高いのに血清鉄が低いパターンは典型的な「炎症のせいで鉄が使えない状態」。
⑦ Hb / MCV / MCH(貧血パラメータ)
貧血があるのにフェリチンだけ高い場合は…
→ 隠れ鉄欠乏+炎症の組み合わせが疑わしい。
⑧ Neutrophil/Lymphocyte Ratio(NLR)
好中球 ÷ リンパ球
- 2以上で「炎症ストレス」が疑われる
- 分子栄養学でも炎症評価に使われる
炎症でフェリチンが上がっているときの典型パターン
| 項目 | 典型変化 |
|---|---|
| フェリチン | ↑ |
| CRP | ↑ |
| 白血球 | ↑(特に好中球) |
| 血清鉄 | ↓ |
| TIBC/UIBC | ↓ |
| トランスフェリン | ↓ |
| 亜鉛 | ↓ |
| 銅 | ↑ |
| ヘプシジン | ↑ |
| ALT/AST | やや↑することも |
まとめ
フェリチンだけでは鉄の状態は判断できない!
かならず他の炎症マーカーと鉄パネルをセットで見ることが重要。
